Ferrari 612 内装一式 カラートリートメント

before

after

【解説】

612スカリエッティのシートをリペアいたしました。
とてもしなやかなセミアニリンのシートは、手で触れるだけでもふわりと暖かくやわらかい。革の質感を感じることができます。 オーナーはこの良質な革に包まれて運転するのですから、さぞ気持ちよくドライブを楽しまれていることと思います。
しかし、”革の質感を感じられる”ということは、それだけ塗膜(塗料の膜)も薄く、色褪せや劣化がし易い。という点もございます。 こちらのスカリエッティも、きれいにお使いいただいているものの、まさしく良質なセミアニリンだからこそ出てしまう塗料の劣化(色が変化してきます) や、サポートの部分に若干の荒れが見受けられました。
施工前にオーナー様と入念にお打ち合わせさせていただき、そのしなやかさを失わぬよう、新しく乗せるカラーはなるべく薄くかける方法を選びました。

いよいよ施工の開始です。
セミアニリンという特徴の他にもう一つ、今回の大きなポイントは”シートと色の違うステッチ”ということ。
ブラックのシートに赤のステッチ・・・とてもスポーティーな仕様で、内装の統一感をみても、オーナー様はきっとこの組み合わせがお好きなはず。。。 手間・時間ともに要しますが、カラートリートメントするにも赤いステッチは生かす方法を選びました。(と、言葉で書いてしまうと簡単なのですが、施工者は息を止めながらの細かい作業が続きます。。。(笑)

今回は色決めにもとても時間をかけました。
こちらの革は光の当たり具合によって色が異なるように見えるのです。
何を言っているのか・・・と思われるかもしれませんが、それだけ”顔料が薄く塗ってある”良質なセミアニリンでした。
というのも、黒い顔料の下の革を染めた色はなんと・・・”赤”。
シートを縫製した職人は、セミアニリンを使い続けることで出てくる”色の変化(劣化)”も計算に入れて、オーナーが選んだ赤のステッチと
劣化しても色合いがおかしくならないようこの革を選んだのかな・・・?
私たちを悩ませたのは、そんなオシャレな縫製職人の心意気だったものですから・・・これは益々精進して施工に打ち込まねば!と思いました。

いよいよ、オーナー様への納品の日。
完成を見てくださったオーナー様の第一声にホッと安心いたしました。
努力したものの、一部ステッチが染まってしまった部分もありましたが、『革がよみがえったプラス面のほうがはるかに大きい!』と お喜びいただきました。

私たちが驚いたことがもう一つ。こちらのスカリエッティ、ナンバーの部分がスイッチ一つで跳ね馬のエンブレムと入れ替わっちゃうんです!!
とってもかっこよくて、映画のワンシーンを見ているようでした。。。

1台と同じ車はない、そんな大切な車をわれわれに託してくださったオーナー様。
これを機に、今後とも末永いお付き合いをいただければとても嬉しいです。
今回のレポートは、その気持ちをこめて、書かせていただきました。(ちょっと長すぎて申し訳ございません。。。苦笑)