投稿日: カテゴリー 一覧, 未分類

革の基礎知識-革の種類

 

 

はじめに

皮と革の違いは漢字の違いだけではありません。

  • 革:『なめし』加工をしたもの
  • 皮:動物の体を包んでいるもの(または剥いで加工する前のもの⇒原皮)

このように考えて区別します。

では、何故なめし加工が必要なのでしょうか?

動物からとられた生皮は、なめしを行わないと乾燥して硬くなったり、腐ったりします。それでは使い物にならないので、しなやかさを失わないよう、なめし加工を施します。

『皮をなめすことで、革が作られる』ということです。

なめされた革と言っても、その種類の多さには驚きです。

哺乳類、爬虫類、なめし方、表皮の加工方法、仕上げ方法等により、見栄え、手触り感、特性等が全く異なる革になります。

とても全てを網羅することはできませんが、最も基礎的な革の種類—基礎知識として以下にまとめてみました。

なめしの種類(大別)

タンニンなめし(渋なめし)

タンニンは植物から抽出した植物タンニンを使用します。タンニンでなめされた革の特徴は、水をよく吸い、水分を含むと一時的に柔らかくなりますが、伸びてしまったら元に戻らないという物性もあります。表面の手触りは紙のような感触。丈夫で、使用していくといわゆる”あじ”が出る革です。しかし、新品の状態を保つのはとても大変。バッグや手帳等の小物に適しているようですが、革にはこだわりがある・素材そのものを楽しみたいという方はインテリアに挑戦してみるのも良いでしょう。

クロームなめし

塩基性硫酸クロムを使用してなめします。吸水性が少なく、柔軟・伸縮に富んだ耐久性のある革に仕上がります。タンニンなめしと比較すると、加工時間を大幅に短縮できることから安価、しかも耐久性に優れるという点で、近年最も多く利用される製法とも言えます。しかし、環境問題を配慮し、アルミやアルデヒド等を使用してなめすことも研究されているようです。車のシート、ソファー、ジャケット等、様々な革製品に使用されています。

混合なめし(コンビなめし)

タンニン、クロムの両方を使用したなめし材で行う加工法です。タンニンなめし・クロームなめし両方の特性を併せ持つことから、広く利用されているようです。グローブレザー等が代表的。

その他、油、鉄、チタン、リン酸等の薬品でなめされるものもあるようです。

 

 

動物の違いや獣齢の違いによる革の種類

牛革の種類

最も多く使用されているのは牛革ですが、同じ牛でも革に加工する獣齢(年齢)によって呼び方が変わります。

カーフ(Carf)

生後6ヶ月以内の仔牛の革。
繊維が細かく滑らかで上質ですが、面積が小さいため価格も高価。

キップ(Kip)

生後6ヶ月~2年以内の中牛の革。
カーフより少し硬めになるが、厚手で加工しやすく丈夫という特徴がある。

カウ(Cow)

生後2年の牝の成牛(既出産の牝牛)の革。
厚手で丈夫な革ですが、牡牛より柔らかくしなやかです。

ステア(Steer)

生後3~6ヶ月に去勢された牡の成牛の革。
面は粗くなりますが、耐久性に優れているため、最も多く使われています。
※去勢する意味・・・去勢していない牛は気が荒く、牛どうしで喧嘩をしたり囲いや建物等に当たったりします。
これによって出来てしまうキズを防止するという意味があります。

ブル(Bull)

生後3年以上の牡の成牛の革。
キメは最も粗くなりますが、大面積で厚く丈夫です。
しなやかさより耐久性を求められる製品にしようされています。

 

  

 

牛革以外の革

ピッグ(Pig)

豚の革。表面が摩擦(こすれ)に強く、通気性に優れています。バッグ・衣類をはじめ、靴の中敷や医療製品に多く使われています。

馬革

特に、尻部分の革を コードバン と言います。全体的に柔らかな繊維組織を持ち表面も滑らかです。お尻の部分は細かい繊維組織になっていて、コードバンという美しい光沢のある革として使用されます。

シープ(Sheep)

羊の革。毛穴が小さく、キメが細かいためソフトな感触です。薄手の革なので肌さわりも良好です。

ゴート(Goat)

山羊の革。繊維が密集しており、羊革より厚手。感触は羊革より硬いのですが、その分丈夫です。

ディアスキン(Deer Skin)

鹿の革。非常に吸水性がよく、水洗いが出来ます。また、繊維の性質上、引張りに対しては群を抜く強靭性を備えています。

オーストリッチ

駝鳥の革。ブランド名にもなっていますね。羽毛の生え際が凸模様になっていることが特徴的で有名です。個性的な風合いを醸し出しています。価格はとても高価です。

その他

亀革、ワニ革(クロコダイル・アリゲーター等)、蛇革、象革、カンガルー革、ペッカリー、トカゲ、鮫 等・・・ 多くの種類が存在します。

どの革も特性、趣向等を加味して商品を選ぶと良いと思います。基本的に動物(毛や皮膚を被った生き物)は革にするための加工は可能なようです。

 

 

仕上げの違いによる革の種類

素上げ

ナチュラルレザーとも呼ばれますが、なめし加工後にほとんど塗装を掛けないで仕上げます。軽度の塗装や油脂類、シリコン等を使用して仕上げられているものもあります。
柔らかくしなやかですが、耐水性、耐摩耗性等が低く、水染みや色移り、キズ等がつきやすい、デリケートな革です。

アニリン仕上げ

革に塗料(染料)を染み込ませて染色し、表面はトップコートのみで仕上げたタイプ。表面に顔料がかかっていない為、摩擦への耐久性・お手入れが難しい・色落ちする可能性がある等のデメリットはありますが、革の風合い・質感は最上級に分類されます。
使い込むうちに色・手触り・風合いが変わる為、その変化を”あじ”として好んでお使いになられる方でないとおすすめ出来ません。

セミアニリン仕上げ

革に染料を染み込ませて染色した後、表面に顔料を薄くかけて仕上げたタイプ。染料を染み込ませることによって顔料の膜の厚みが薄くなる為、ピグメントより柔らかい感触です。又、アニリンのように革のダイレクトな質感はありませんが、ピグメントと同様にお手入れが可能です。

顔料仕上げ(ピグメント)

革の表面に塗料(顔料)がかかっているタイプ。摩擦への耐久性の強さ・比較的手軽にお手入れが出来る 等から、車のシート・インテリア・ バッグ等 様々な商品への汎用性が高い革です。見た目では、合成皮革との差がほとんどありませんが、手触り・臭い・シボに毛穴があるか等で一般の方でも見分けることが可能です。

オイルアップレザー

なめし、または仕上げの段階で、オイルを多量に含ませた革。タンニンなめしの際にオイルを含ませれば、タンニンなめしの革に近い性質のオイルアップレザーとなり、クロムなめしの際にオイルを含ませると、クロームなめしの革に近い性質のオイルアップレザーになります。

 

大別すると上記の仕上げ方法が、一般に流通している革製品のほとんどを占めていると言っても、過言ではないと思います
しかし、上記以外でも多くの仕上げ方法がありますが、敢えて言及致しません。

 

 

革の表皮の加工方法の違いによる種類

銀付きレザー

なめし加工で毛を除去し、革を銀面(革の表皮の意)状に仕上げた革。

本来のスキンをそのまま表面に使用するので、グレイン(シボの模様)や毛穴がはっきり判ります。次工程でアニリン、顔料、エナメル等で仕上げていきます。

銀摺りレザー

なめし加工・乾燥後に銀面をサンドペーパー等で摺り、着色、塗装で仕上げた革。

銀面を削るので、ナチュラルマーキング等のキズやダメージ痕が目立ちにくくなります。銀付きレザーのツルっとした手触り感に対し、サラッとした起毛が特徴です。

ヌバック

牛革の表面(銀面)を削って起毛させたもの。毛足があると言うよりも、表面が細かく毛羽立っていてサラっとしているといった手触りです。鹿革のヌバックが本来の意味と言われます。

スウェード

ヌバックとは反対に、革の内面(体内側)を、細かなサンドペーパーでバフがけして起毛させたもの。仔牛、山羊、羊等小動物の革を使用します。

バックスキン

牝鹿の銀面を除去し、サンドペーパー等でバフ掛けしてヌバック様に仕上げた革。
牝鹿(Buck)が語源で、裏側(Back)の意味ではありません。
見た目が起毛しているので、スエードやヌバック、ベロアと混同されることがあります。

床革(スプレッテド)

皮は銀付きと銀無しの表面を持つ体内側の皮に分割され、その後なめされますが、この銀無しの革が表面になっている革を 床革と言います。バッグの底等に使用されます。
床革の銀無しの表面に塗装・型押しして銀付きレザーのように見せることもあります。

まとめ

御覧頂いたように、革には多くの種類があります。

お手入れや修復をされる場合は、その革に最も適した方法で処置することが大切ですから、所有している革製品が何の革か正しくジャッジしましょう。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA