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革ソファーのクリーニング Q&A

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はじめに

革ソファーのクリーニングは、基本的には「革のお手入れ」をご参照頂ければ、ご自身でも充分に実施可能です。

ですが、弊社へのお問合せで最も多いのが、ソファークリーニングについてです。

今回は、お問合せが多かったご質問についてQ&A形式で記事にしてみます。

「銀付き顔料仕上げ」の革張りソファー

銀が擦られず、顔料で仕上げられている牛革製ソファーは、最も多く使用されているタイプだと思います。(セミアニリン仕上げの革も含みます。)
銀面の上層に顔料を掛け塗膜を作り、この膜を保護するクリアー層を有しているため、素上げやアニリン仕上げの革に比べ、本来の革らしさは損なわれますが、その代わりキズが付きにくく、丈夫な革と言えます。

①クリーニング

洗浄により、汚れと油脂類を除去することです。
革のクリーニングは「革のお手入れ ステップ2」の要領で行います。

 

 ・Q1:ソファーは革の面積が大きいので大変そうですが。。。

 ・Q2:洗浄した後、ムラになりませんか?均一に汚れを落とせるでしょうか?

 

革の面積を考慮すると、一度に全体を洗浄するには結構な覚悟が必要です。
(仕事として施工している弊社でも、3Pソファーは2人掛かりで仕上げます。)
複数回に分けて洗浄すると、長時間労働にならずに済みますし、その分丁寧に作業できるので、汚れのムラにもなりにくいです。今回はこの座面と背もたれ部分。次回はその隣の部分、というようにセクション分けすると良いと思います。
ただ、複数回の期間を長くとると、最初に洗浄した部分と最後に洗浄した部分とで差異が生じます。
革の表面の模様(凹凸)の凹部の底に入り込んだ汚れは、布で擦っただけでは除去できない場合があります。これが洗浄ムラの原因となります。このような場合は、ブラシに洗剤の泡を含ませ、軽く谷底から汚れを搔き出すようにします。汚れが浮き上がってきたところで、乾く前に布やペーパータオル等で汚れを拭き取りましょう。

 

 ・Q3:白いソファーがかなり黒ずんでいる。クリーニングできれいになるの?

 

ご使用するクリーナーや布にもよりますが、現状に比べ、きれいになることは確実です。泡とブラシで汚れを浮かせて、布で拭き取る。何度も述べていますが、これが基本です。しかし、表面がきれいになると、汚れで気付かなかったキズやシミが目立ち、落胆することもあります。キズやシミはクリーニングで除去することはできません。
キズはリペア、シミはシミ抜き(ケースにより部分塗装)で対処できます。

 

 ・Q4:革の表面の細かい筋(グレイン)に沿って線状に汚れが走っているのは?

 

Q1.Q2.で解説させて頂いた凹凸の底に汚れが付着している状態です。
汚れが付着しているだけの場合は、前述の方法で汚れや異色を除去できます。しかし、そうではない場合があります。
経年劣化により、谷底の塗膜がヤセたり切れたりして、汚れや異色が、革の銀面や繊維層に浸透していることがあります。または汚れを長期間放置したことにより、汚れが持つ色素が革に移り、シミになっていることもあります。この場合はクリーニングで対処することはできません。
軽度の場合(小ヒビ等)は劣化した塗膜を除去して、新しい塗膜を形成することで、革を保護することができます。しかし、亀裂や大きいヒビ割れに進行している場合は、パテやフィラーを施すなど結構大掛かりなリペアを必要とします。
塗膜切れか汚れの付着かを判断するには、ルーペ等で筋を拡大して観てみましょう。黒っぽいものの淵にギザギザしたクレバス様のものが見える、更にケバも見えるという場合は、間違いなく塗膜切れとジャッジして良いでしょう。

 

 ・Q5:クリーニング液を革につけた瞬間に、革の内部に入ってしまい、洗浄できないのはなぜ?

 

これは、革の塗膜と保護(クリアー)膜がほとんど残っていないほど摩耗、摩滅、脱落している状態です。
革が新しい時は、光沢の有る無しに拘わらず、ツルっとした表面であったはずです。しかし現在はツルっとした表面ではなく、塗膜が亀甲模様のように散在している、もしくは残存する塗膜は無く、薄っすらと桃の毛みたいに毛羽立っている。(加工的に表現するとヌバックと同様です。)革表面を保護するものが存在しないので、クリーニング液は何の抵抗もなく革の内部に浸透してしまうということです。
Q4と同様に人工の銀面を形成し、新しい塗膜と保護膜を施すことにより、修復することが可能です。

 

 ・Q6:クリーニングして汚れを拭き取った布に革の色が付くのは?

 

顔料の塗膜は残っているが、保護膜が摩耗、摩滅して塗膜を保護していない状態です。
日常使用しているとき、ソファー革表面に擦れるのは、衣服か素肌ですが、クリーニングの洗浄液と反応することにより、無防備になった塗膜の色素が溶けて拭き取り用の布についてくることがあります。これを汚れと思い込んで繰り返し擦ると、顔料の膜が薄くなり、周囲と異なる色(その革の着色前の色)になる場合もあります。この状態になると、日常使用でも衣服に水分(汗や雨、風呂上がりの浴衣の湿気等)が含まれていると、衣服に色移りする可能性も生じます。
Q4.Q5.と同様に対処することができます。

 

 ・Q7:肘掛の部分だけ黒ずみが落ちない、ヒビ割れもありそうな。。。

 

3Pのソファーによくある状況です。ソファーはソファーベッドと言われるように、寝転んで寛ぐことが少なくありません。その場合、肘掛は頭を預けるのに丁度良い高さですね。ただ、直接頭を肘掛に置くことで、頭皮から分泌される体液や、頭髪につける油脂類が、革(表面の塗膜、保護膜)を溶かす、或いは浸透して、場合によっては革の繊維まで腐食することもあります。革用のコンディショニングオイル等と異なり、革専用ではない油脂類は、革に良い影響を与えません。頭を肘掛に置く場合は、面倒ですがタオル等布を1枚挟むだけでも防止効果が得られます。
また、一人掛けのアームソファーや二人掛けのラブソファーの肘掛でも同様の状況になる場合があります。これは、殆ど手垢や手から分泌される体液、更に立ち、座りするときに体重をかけることで革に荷重が加わることにより発生します。
これも、程度によりますが修復は可能です。が、防止策がある場合はこれを実施して、革にダメージを与えないことが重要です。

 

 

 

 

②トリートメント

クリーニングで汚れや不要な油脂類を除去した後は、保革のため、クリーム等で加脂しましょう。
洗浄しない日常のお手入れでは必要ありませんが、洗浄した後は革内部の油脂類も希釈されたり、汚れを拭き取るときに脱脂されます。これを補うため、加脂することで革内部のコンディショニングと表面のプロテクトを行います。

 

 ・Q1:トリートメントするクリーム(油脂)は何が良いのでしょう?

 

ここでは、特定銘柄を挙げることは控えさせて頂きます。
どのような効能を持つ製品が望ましいのかを、お伝えしたいと思います。
対象の革が、銀付き顔料仕上げの革ですから、お手入れや、ご使用による変化を楽しむものではなく、フォーマルに或いは、オリジナルの状態を維持する。という観点から選択することが良いでしょう。とは言え、ソファーに付属されている製品があれば、これを使用することが良いと思います。

 

 a.極端な光沢(ツヤ)仕上げになるもの。
   ツヤを出すためにトリートメントを行うわけではありません。

 b.仕上がり面に粘性(ベトツキ)を生じるもの。
   仕上がり面にベトツキがあると、汚れやホコリを吸着してホールドしてしまいます。

 c.塗布したときに、革の色に変化を与えるもの。
   配合成分中に、オリジナル顔料と反応し化学変化を生じる可能性があります。

 d.塗布用の布に色が移ってくるもの。
   c.が更に強力に生じている場合です。
   塗膜を溶かしてしまっては、保革の意味がありません。

 e.革の毛穴を塞いでしまいそうなもの。
   通気性が悪くなるので、繊維層にダメージを与えやすい環境になります。
   革の繊維層が弱ったり腐ったりすると、革の強度は劣化します。

 

上記5項目は、使用を避けるべき製品といえます。(弊社の見解です!)
何れも、非常に強力な油脂成分が含まれた製品に多く見られる現象です。ということから、ソファーの革トリートメントには、植物性の加脂剤がお勧めです。
革の内部に良質な油脂を浸透させて、表面に残存して形成される膜で、不要な油脂が繊維層に浸透することをプロテクトする。という優れた効能を有する製品もあります。

 

 

 

 

 

「銀付き、染料仕上げ、素上げの革」のソファー

銀が擦られず、染料で仕上げられている革(アニリン)または素上げの革が使用されている牛革製のソファーやダイニングチェアー等は、高価なことと、手入れの難しさにより、顔料仕上げの革製品ほど一般には使用されていません。キズやシミが付きやすくご使用においても注意が必要ですが、革本来の風合いと手触り感、経年変化を楽しむことができます。

①クリーニング

 ・Q1:アニリン革のクリーニング時の注意点は?

顔料仕上げの革と同様の質問がありますが、アニリン仕上げや素上げの革は、銀面上に顔料の塗膜を持っていない(薄く柔らかい保護膜を有する革はあります)ので、キズや銀荒れを修理できても、修理痕を化粧して隠すことができません。また、水ですら水ジミを作ってしまうような革ですから、クリーナーで洗浄するのは、大変勇気が必要です。クリーナーで浮き上がった汚れを拭き取るときに、汚れの色素を革に擦り込んでしまう可能性が高く、「輪ジミ」を自ら作ってしまう可能性があります。
キズや、シミは革のアジ、使用の歴史と考えて、日常のお手入れ程度に留め、極力手を加えないで済むように、注意してご使用することを心掛けて下さい。
付属のケアセットがあれば、それを使用して、以外のものは事前にテストクリーニングをして変化の有無を確認してから使用しましょう。
アンティークソファーのように、革表面の色に濃淡があったり、汚れの拭き取り跡、シミ等によるマダラ模様がお好みの方は、前述に固執する必要はありません。

②トリートメント

 ・Q1:アニリン革トリートメント時の注意点は?

対象の革が銀付き、染料仕上げ(または素上げ)の革ですから、油脂類の内部浸透に対し抵抗する膜が殆どありません。油脂が革表面に付いた瞬間から、革内部への浸透が始まります。故にケア製品の特性を大きく受け、数年後の革の状態を大きく左右する要素になります。付属しているケア製品やメーカー推奨品があれば、勿論これを使用することが良いでしょう。
クリーニングと同様に、極力オリジナルに近い状態で維持したい方は、日常のお手入れ(乾拭き程度)をこまめに行い、必要に応じて(脱脂されてカサカサになる前)アニリン用のクリームを擦り込みましょう。(アニリン仕上げ、顔料仕上げの革両方に使えるクリームもあるようです。)
しかし、専用クリームを使用しても、繰り返しトリートメントを行うことで、色落ちしてくることがあります。この革の性質上、防ぎようのない事実です。(顔料仕上げの革でも、保護膜が摩耗や摩滅すると色落ちしますが、アニリン仕上げの革より長期間耐えることができます。)
染料で着色して、トップクリアー(保護膜)を掛けることで対処はできますが、染料を再塗布すると、きれい(均一)に染色できないことが多い為、お勧めできません。
また顔料でシミやムラを隠蔽するときれいにはなりますが、顔料仕上げの革になってしまうので、革の表情やしなやかさは失われてしまいます。ということで、最終的には変化を生じるのがアニリン仕上げの革、ということをご理解してください。

 

 

 

 

「銀摺りレザー(起毛タイプの革)」のソファー(ヌバック、スエード等)

銀(或いは裏側)が擦られて、起毛させてあるタイプの革です。銀付きレザーに比べツルツル感はありませんが、シットリ感と柔らかく繊細な手触りの良い質感を備えています。銀付きレザーに比べお手入れが難しいと思われていたり

①クリーニング

 ・Q1:起毛革はどのようにクリーニングしたら良いのでしょう?

この革も、顔料仕上げのような厚い塗膜を有していないので、洗剤液は表面に留まらず、革の内部に吸い込まれます。付属のケアセットをご使用してください。付属製品やメーカー推奨品が無い場合、家具店やネットで、起毛革洗浄水やクリーナーを販売しているので、参照してください。
アニリン仕上げと同様に、液体の革への浸透速度が非常に速いので、失敗や事故を防止するために、目立たない部分でテストクリーニングを行い、乾燥後変化が無いことを確認してから、全体に拡げていくと良いと思います。
ホコリや衣服の繊維(糸くずなど)等だけなら、ブラッシングすると、毛の方向が一定になり、整然とします。併せて起毛革専用の洗剤を柔らかいタオル等布に含ませ、擦ることで、軽い汚れは落とせます。この場合も事前にテストクリーニングしましょう。部分的に汚れを落とす場合は、ゴム製のクリーナーもあります。
起毛革製品を丸洗いできます。という洗剤もあるようですが、ソファーは表面積が大きく、均一に洗浄することが難しいので、大量の水分を含ませる方法は、自信のある方以外は、避けたほうが良いと思います。

②トリートメント

 ・Q1:起毛革のトリートメント、その他のケアは?

加脂して潤いと栄養を与えるという意味では、銀付きアニリン仕上げの革と同じクリームで良いとは思いますが、起毛・染色していることから、専用のクリームやスプレーを使用することがお勧めです。栄養を与えるという効能の他に、防水や、色落ち防止、色落ちや色褪せを補う補色、防水ができるスプレー等もあります。(付属・推奨製品が優先です。)
クリーム系の塗布は布で擦り込みますが、布に浸み込ませたクリームを最初に革に塗るときに注意が必要です。布に含まれているクリームの量が多い為、アニリンレザーと同様、接触した革の部分に一気に浸み込み、塗り伸ばしが難しく、周囲の薄く塗られた部分とは色の濃さが変わってしまいます。乾くと均一になるものもありますが、ならないものもありますので、実使用上の製品の特長も知っておきましょう。
対象が起毛革小物であれば、少量の製品でも十分用足りますが、ソファーとなると、特に洗浄剤は複数使用になると思いますので、余裕のある予算を考慮しましょう。
また、補色可能なスプレーでは、色の変化を良く見ながら、少しずつ色付けしていくことが、周囲との違和感を少なくするコツです。染まりが悪いからといって、一度に大量に吹き付けると、乾いた時に周囲より濃い色合いになることがあります。また、余分な塗料を革に吸い込ませることは、革の特性を劣化させる原因になりかねません。
水分からこのタイプの革を守るという点では、防水スプレーも有益です。水分やこれに混じっている汚れをプロテクトするので、シミにもなりにくいと思います。これも、目立たないところでテストして、見かけや、手触り感に変化のないことを確認してから、全体に拡げることをお勧めします。ただ、エアゾールタイプの防水スプレーは、数回水分を被る(又は頻繁に擦れる)と効力が低下するので、撥水力を維持するためには継続して使用する必要があります。

まとめ

ご紹介してきたように、革はその種類によって特性が異なるため、クリーニングやトリートメントの仕方も異なります。また、将来革の表情をどのように変化させたいのか、またはオリジナルに近い状態をキープしたいのか、ということでもその方法は変わります。
ご自身が、どのような思惑で革ソファーをご使用したいのかをイメージして頂くことで、お手入れ方法も明確になります。特にアニリン仕上げの革や起毛革は、シミやキズをリペアすることが難しい(リペアは可能ですが、塗装で隠すことができない)素材なので、こまめなお手入れをすることにより、末永くご愛用頂けるよう、可愛がってあげてくださいませ。


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