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革の劣化とそのメカニズム/革製品を大切にご使用頂く為に知っておきたい6つの状態と対処方法

はじめに

家具や車両に多く採用されている革は、ピグメントレザーです。真皮とその上の塗装膜の層とで2層構造になっており、アニリン(無顔料)やナチュラル革と異なり、顔料を厚く仕上げてあることから取り扱い易く、顔料の性質上原皮の小キズを隠蔽できるため無駄なく生産できるので、比較的安価です。

革製品は日々繰り返し使用することで、経年劣化による荒れ、キズ等ダメージを受けます。

キズは人為的なものとしてさておき、ここではピグメントレザーの経年劣化によるダメージについてご説明いたします。

 

革はどのように劣化するのでしょう?その①

  (区分:クリーニング・トリートメントの範囲)

新品の革(使用開始時) 

革は表面の塗装膜とその下の層真皮によって形成されています初期段階の汚れや劣化は、多くの場合真皮の劣化ではなく、塗装膜の劣化ですがまだ荒れてはいません。(顔料仕上げの革)

塗装膜のほぼ無いアニリンや塗装膜(顔料)の薄いセミアニリンという革もあります。

半年~1年使用(目安)

使用していくと、チリやホコリ、油脂類が混じり、汚れが付着します。この時点でクリーニングしてあげれば、汚れはきれいに除去できます。また、塗装面の劣化も少なく済みます。革のお手入れ時期として最もお勧めできるタイミングです。

塗装面の劣化の始まり

更に継続使用することで、塗装面の劣化が始まります。見た目にはそれほどシワや亀裂等も無く、油脂類の堆積により、良いツヤが出てきて奇麗だなと錯覚しがちですが、塗装の膜は傷み始めています。この段階がクリーニング・トリートメントで現状復旧できる限界時期です。

対処方法/クリーニングとトリートメント

クリーニングの必然性

塗装膜が劣化する前の良好な状態で、クリーニングすることがお勧めです。革専用のクリーニング液を泡立て汚れの付着面をブラシ等で洗浄します。汚れは油脂と密着しているため、革表面に堆積している油脂ごと除去・脱脂することが肝要です。

クリーニングを省き、オイル系のワックス等を塗るだけでは、堆積した油脂類の上に更に油脂を塗ることになるので、汚れを除去するどころか、むしろ汚れを擦り込むことになるので要注意です。正しいクリーニングを行うことで、衛生的にも有効な処置と言えます。

トリートメントの有用性

クリーニングで脱脂された革は汚れが除去されてきれいになりサラサラとします。これは革表面の油脂が脱脂されたため潤いに欠けた状態になっているということです。革に良質なクリームで加脂することにより、潤いを与え繊維層を良好な状態に維持します。更に革表面に残留した成分で、衣服や大気中に含有されている油脂類を革内部へ浸透しにくくし、繊維層の劣化速度を鈍らせ、長期の使用に繋がります。

 

革はどのように劣化するのでしょう?その②

(区分:リペア・カラートリートメントの範囲)

 

塗装膜の劣化の始まり

2-3塗装面の劣化の始まりの状態からある程度の期間、この状態が維持されますが、劣化が止まっているわけではありません。塗膜の最上層のトップクリアーが色の膜を保護しているため、劣化速度が鈍いのです。この段階でカラー・トリートメントを行うとパテやフィラー等で補強・修復を行わないので、きれいに仕上がります。

 

塗装膜が薄くなっていく

トップクリアーの層が擦れたり、削られたりして、小ヒビや亀裂が発生すると、汚れが入り、革が伸縮・屈曲を繰り返す度に劣化を進行させます。この段階でリペアを行うと、フィラーで補強、若しくは劣化した塗膜を剥離して新規に塗装することで、新しい塗膜が形成されるので、きれいに仕上がります。真皮が無傷なので劣化を遅延できます。

 

真皮にヒビ・亀裂が到達

ヒビや亀裂が塗膜の厚みを通り越して、真皮に到達すると、革の銀(革の表皮の意)にもダメージが発生してきます。銀付きレザーではこの銀が強さの源と表現しても過言ではありません。補強するため、また表面を整形するためにパテ盛は必至ですが、風合いを損ねます。修復の仕上がり感は人工的になり、また、耐久性も極端に悪くなることは言うまでもありません。

 

対処方法/リペアとカラー・トリートメント

クリーニング・脱脂・劣化塗膜の除去

塗膜が劣化する前の状態でクリーニング・トリートメントのケアで仕上げる場合と異なり、革リペアやカラー・トリートメントを行う場合、汚れと油脂は徹底的に除去します。塗料と革密着を強固なものにするためです。更に劣化している塗膜も剥ぎ取ります。新しい塗膜の下地となる部分が劣化していたら、新しい塗膜の耐久強度を損なうからです。

 

塗膜剥離・下地処理

塗膜・銀荒れリペア程度であれば、クリーニング・脱脂処理後革用のフィラーを施し、乾燥後整形して次工程に移ります。

キズや小ヒビ・亀裂のリペアに及ぶ場合、または、塗膜全体が劣化している場合は、オリジナルの塗膜をすべて剥離します。塗膜の密着強度の確保と、塗膜の厚みが段差となって仕上げ面に反映しないようにする為です。

その後、革用のパテを施し、整形後次工程に移ります。

塗料で化粧すると隠れてしまうこの処理こそが最も大事な工程です。

 

リペア、カラーリング

リペア(キズや荒れの修理)の種類によっても、修理方法は異なりますが、革と見栄えに最良と推測される方法で施工します。銀荒れの場合には薄い膜を形成するフィラー、キズや亀裂にはパテを施すことが一般的です。

下地処理が緻密に行われていれば、薄く均一に塗装することできれいな革表面を蘇らせることができます。

色調は、部分塗装の場合、色を塗らない周囲の色に。全体塗装の場合は最も劣化していない部分の色に合わせ、違和感のないよう配合します。

 

トリートメント

クリーニングで脱脂された革は、汚れや油脂が除去されてきれいになり、サラサラとしています。しかしリペア後の革の状態は、更に強力に脱脂されていますから、トリートメントは欠かせない処置です。

脱脂された革に潤いを与えることは勿論のこと、新しく形成した塗膜にも浸透させ、塗膜の硬化を和らげます。革表面に残り形成される成分により、汚れや油脂が革の深部に浸透することを防止する効果も有効です。

 

まとめ

革製品を大切に、長期にわたりご愛用頂けるための対処方法(弊社サービス)をご紹介させて頂きました。

革製品には、代々継承されたアンティー・クソファー、大切なお客様を迎えるためのソファーセット、有名ブランドのソファー、プレゼントされた革バッグ、大切な人を載せる車のシート、フォーマルに着こなしたい革のコートやジャケット、等々思い入れや拘りの逸品が多いことと思います。そんな大切な品々を末永くご使用頂くためにも定期的なケアやリペアができることを、是非知っていただきたいと思います。

 

 


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